スポーツ報知ベテラン記者が伝授する「スポーツ新聞の作り方」@港区立港南小学校【シナハロ特別企画に密着!前編】
2020年10月2日(金)、品川駅から徒歩10分ほどの所にある小学校、港区立港南小学校にスーツを着た2人の男性がやってきました。
特別授業「スポーツ新聞の作り方」を教える報知新聞社の名取広紀(なとりひろき)さんと澤辺英樹(さわべひでき)さんです。新聞制作のプロとして、国語の授業で新聞制作を学ぶ5年生(全6クラス)に向けて新聞の作り方をレクチャーします。
報知新聞社は、毎年品川で行われている地域のハロウィンイベント「シナハロ」に協力しています。この特別授業は、シナハロとの新たなコラボ企画として実施が決まりました。
今回は、特別授業にRe-FRESH編集部が潜入してきました!
その様子をレポートしていきます。
「スポーツ新聞」って何?
今回授業を担当したのは報知新聞社編集局次長の名取さん。長く野球の取材を担当した後、芸能デスクとしてテレビの情報番組で芸能コメンテータ—も務めたという経歴の持ち主です。
こちらが名取さんです
「おうちで新聞を取っている人はいますか?」
名取さんが子どもたちに問いかけると、半数ほどが手を挙げました。
「じゃあ、スポーツ新聞をおうちで取っている人?」
今度は、ほとんど手が上がりません。
「そうですよね、おうちで取っているのは大抵一般紙と言われるものです。スポーツ新聞はそれとは違って、サッカーや野球などのスポーツを中心に、芸能ニュースも扱う専門性の高い新聞です。」
へ~。
取り扱う内容が違うということがわかったところで、今度はスポーツ新聞と一般紙の「見た目」に注目していきます。同じ出来事を扱った『スポーツ報知』と『読売新聞』の1面を見くらべてみました。
さて、どこが違うでしょうか?
「スポーツ新聞の方が写真が大きい!」
「スポーツ新聞は文字の量が一般紙よりも少ない!」
「スポーツ新聞の見出しの文字には色がついている!」
子どもたちは次々に手を挙げて、気付いたことを発言していきます。
元気よく手を挙げる港南小5年生のみなさん
「そうなんです!スポーツ新聞の方は、見た人が直感的に『読みたい!』と思うようなインパクトがあるでしょ?このレイアウトが勝負なんです。」
と、名取さんが説明します。確かに、パッと目に入ってくるのはスポーツ新聞の方かもしれません。続けてこう話します。
「スポーツ新聞は家で取っている人は少なかったですよね?その代わりに、コンビニや駅のキオスクで買われることが多いです。店先で新聞を見た人の心をつかむレイアウトになっているのがスポーツ新聞の特徴です。」
報知新聞社って何をやってるの?
スポーツ新聞の特徴がわかったところで、次は報知新聞社の話題に。
名取さんは、子どもたちにこんな質問をしました。
「みなさん、報知新聞社ってどこにあるか知っていますか?」
おや・・・?
この質問には意外と手が上がりません・・・しかし、何を隠そう報知新聞社の東京本社があるのは学校のすぐ近く。ちなみに、30年前にこの場所へ移転してきたのだそうです。
港南小学校と報知新聞社はこんな距離感です
(黄色のマーカー📍)
「結構近くにあるんだけどなぁ(笑)。ご近所なので、ぜひ覚えておいてくださいね!」と名取さんは残念そうに言いました。
う~ん、残念!
そんな報知新聞社では、どうやって新聞を作っているのでしょう?ここからは、新聞制作の過程について学んでいきます。
「新聞社には色んな部署があります。新聞を売る販売局や、箱根駅伝などのイベントを企画する事業局など。中でも新聞社にとって一番重要なのは、今私が所属している編集局です。編集局にいる記者さんたちが新聞を作っているんですよ。」
名取さんの話を真剣に聞いています
「レイアウト」で魅せる!編集部の職人技に感動
授業の後半では、記事の写真選定と見出し考案を体験します。この仕事を担当するのは、編集局の中の編成部と呼ばれる部署だと言います。
「編成部の仕事は美的センスが必要です。現場記者が書いた原稿を読んで、見出しにどんなことを書こうか?文字は何色にしようか?ということを考えます。」
今回題材となったのは、水泳池江璃花子選手のレース復帰を知らせるニュース。池江選手の写真を、泳いでいる姿、立っている姿、スタートの瞬間など、数種類の中から一つ選んで見出しを付けるという作業をしました。
名取さんが子どもたちにヒントを出します。
「今回の記事で伝えたいのは、池江選手が大変な病気を乗り越えてレースに戻ってきたことや、これからの活躍への期待だよね。じゃあ、写真や見出しはどうすればいいでしょうか?」
さあ、どれがいいでしょうか?
答え合わせでは、なんと実際に発行された紙面を見ます。果たして、プロの編成部は、どの写真にどんな見出しを付けたのでしょうか?
答えはこちらです!
答えが表示されました!
記事に使われた写真は、池江選手がレース後に涙ぐむ姿を映したもの。子どもたちの中では、この写真を選んだ人は少数でした。
📰この記事のウェブ版はこちらから!
「池江璃花子、復帰レースで競えた泣いた『感動した』…『第二の水泳人生。いい形でスタート』」『スポーツ報知』(2020年8月30日)
「実際の新聞では、こんな紙面になりました。さっき見た安部元首相の記事とはちょっと違うよね?レイアウトの特徴は何だと思いますか?」と名取さんが子どもたちに質問します。
子どもたちは「見出しがあまり大きくない」、「全部“た”で終わる(韻を踏んだ)文章になっている」などには気付きますが、どうやらもう一つすごい特徴があるというのです。
惜しい!
子どもたちも必死に考えますが、時間切れになってしまいました。
「みんなが言ってくれたのもそうだけど、もう一つポイントがあるんです。この紙面では、見出しはあまり目立っていないですよね?つまり、池江選手の表情を活かすためのレイアウトにしているんです。」
確かに、見出しの文字は右端に寄せられていて写真に写る池江選手に目が行きます。
「そして、注目してほしいのは、池江選手の目線の先です。ここだけ文字がないのがわかりますか?」
本当だ、全然気付きませんでした。
行の半分ほどの空間が空けられています
(画像提供:報知新聞社)
「今日の授業のためにね、この記事を担当した編成部の人にお話を聞いてきました。」と名取さん。
「担当の人によると、『この記事では池江選手の美しさと強さを伝えられる写真を選びました。そして、彼女の目線の先に空間を作って、未来を向いていることを表現しました』ということでした。自分で考えてみた見出しと比べて、どうだったかな?」
すごい・・・!
文章だけでなく、写真の使い方、見出しや文章の配置や色あいなど全てを含めて「伝える記事」が作られているのですね。編成部の「職人技」に、Re-FRESH編集部も大感動しました。
新聞は知識の宝庫
最後に名取さんは、子どもたちにこんな言葉を残しました。
「新聞は知識の宝庫です。最初から最後まで読めば、今の日本で、社会で、スポーツ界で、何が起こっているのかが全部わかります。ぜひ新聞を読んでください。」
これにて授業は終了です。名取さん、ありがとうございました!
代表児童のご挨拶
今回の授業は小学生向けでしたが、一緒に聞いている大人にとっても勉強になる授業でした。作り手のこだわりに触れると、改めて新聞のよさを感じられますね!
さて、次回は名取さんと澤辺さんへのインタビューをお届けします。今回の授業の感想や、この授業を行うきっかけとなったシナハロとの関わりについてご紹介していきます。お楽しみに!
📰報知新聞社HP https://www.hochi.co.jp/
🎃シナハロHP https://shinahallo.wixsite.com/4786