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子どもだってサードプレイスが必要だ【品川から子どもたちへ クロモン子ども食堂編~前編~】

多くのワーカーが行き交う「大人の街」、品川港南。実はマンモス小学校を抱え多くの子どもたちが育っていく街でもあることを知っていますか?

そんな品川にいるひとりの大人として、一企業としてできることをご提案するシリーズ「品川から子どもたちへ」の第2弾。

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第1弾では、港南の住民と企業が一丸となって地元の子どもたちの思い出づくりに取り組むシナハロをご紹介しました。
「この街ならではの思い出」をつくる【品川から子どもたちへ シナハロ編】

今回は北品川のこども食堂を舞台に「地域の大人による子どもの見守りと居場所づくり」を考えます。

お話を伺ったのは北品川「クロモンカフェ」の店主で、「クロモンこども食堂」を運営する薄葉聖子さん。前編・後編の2本立てでご紹介していきます。

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店主の薄葉さん


北品川の古民家を思い切って借りてみた

「クロモンカフェ」は北品川駅から歩いて5分ほどのところにあります。オープンして今年で12年目。そして、この場所で「クロモンこども食堂」がはじまったのは5年前のことです。
まずは、このカフェのこと、そしてこども食堂をはじめたきっかけについて聞いてみました。

この建物の1階はもともとパチンコ屋で、クロモンカフェはそのパチンコ屋のおじさんが40年以上使っていた住み込み部屋でした。

私はこの辺りで育ったので昔からこの建物のことは知っていて、「この窓の奥はどんな所なんだろう。」というのがずっと気になっていました。

その部屋が空くことになったのですが、大家さんはあまりにも古いので貸さずに物置にしてしまうつもりだったそうなんです。

なので「自分で掃除するので貸してください!」と言って、思い切って借りることにしました。まだ私が会社員をしていた頃のことです。

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この建物の2階がクロモンカフェです


気付いたらカフェ店主になっていた

借りてからは自分でペンキを塗ったり壁紙をはがしたりしてリフォームしていたのですが、近所の人が集まって作業を手伝ってくれたり、家具や食器を提供してくれたんです。

地域の人たちのそんな反応を見て、この場所にすごく期待してくれているのを感じました。

そこで、まずは土日だけ休憩所として開けておくことにしました。すると旧東海道を歩く観光客も来るようになったので、その人たちにコーヒーやジュースを売りはじめて、気付いたらカレーライスやオムライスも出すようになっていたんです(笑)。

そうしているうちに「これなら、ちゃんと飲食店としてやっていけるかも。」と思って、お店をスタートすることにしました。

ある日のクロモンカフェメニュー。とってもおいしそう!


品川区初のこども食堂が誕生!

クロモンこども食堂は、地域のお客さんの声から始まりました。

ある時、地域で子育て支援をしているお客様からの「ここでこども食堂がらできたらいいと思う!」という提案をいただいたんです。当時の私はこども食堂がどんなものなのかも知らなくて、ひとりで留守番をしている子どもたちや、働きながら子育てを懸命にしているお母さんたちにバランスの良い食事の支援をする活動だということは後から知りました。

それで、「飲食店なので食材も必要な道具類も場所もある、お腹がすいたらクロモンにおいでよ!」ってとても軽い気持ちで思いついた次の日に始めちゃったんです。

2015年当時のこども食堂は全国でも30か所ほどしかなく、品川区にはまだ1つもありませんでした。需要があるかどうかも分かりませんでしたが、お店の前に「こども食堂」と書いた看板を置いただけで、子どもたちは本当にやってきました。

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お店の入り口に置いてある看板
(新型コロナウイルスの流行を受け、現在は毎週の開催を停止しています)


「孤食」への共感は子ども時代に感じたひとりぼっちの怖さから

地域の子どもたちが集まって晩ごはんを食べるクロモンこども食堂をはじめた薄葉さんは、地域の子どもたちが抱える「孤食」の問題を目の当たりにします。その時に感じた問題意識の根底には、薄葉さん自身が子ども時代に経験した留守番の記憶がありました。

私が子どもの頃、夕方の16時くらいになるとお母さんが弟を連れて商店街に買い物に行っていました。その間の30分くらい、私は家で子ども番組を見て待っていたんです。

まだ外も明るい時間なんですが、なんだか怖くて後ろを振り向くこともできませんでした。とにかくテレビから視線を外すことなくお母さんを待っている時の緊張感を、すごく覚えているんです。

クロモンこども食堂に晩ごはんを食べにくる子の中には、お母さんが働いていて夜にならないと帰ってこないという子もいます。最近だと、仕事をしているお母さんたちが家に帰る時間は18時か19時は過ぎてしまうでしょう?なので、生まれてたった7年かそれくらいの子どもが夜もひとりでいるなんて・・・と思ってしまって。

目の前にお母さんがいても「孤食」

それだけではありません。お母さんが家にいるのに「孤食」が発生しているという現実がわかってきました。

例えば、ある子どもに普段の生活のことを聞いた時、「19時にお母さんが家に帰ってきて、その後に弟を保育園に迎えに行ったり、お買い物をしたりしてるんだ」と話していました。

お母さんは家に帰ってからもごはんの支度をしたり、他の家事をしたりして忙しいんです。なので、お母さんと一緒にいてもひとりでごはんを食べている子どもは多いです。そして、お母さんたちも「もっと子どもに優しくしたいのに、時間に追われてつい怒ってしまう」と悩んでいることを知りました。

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薄葉さんの名刺の裏に書かれた子どもたちへのメッセージ


家と学校だけじゃない。子どもにも第3の居場所を

様々な子どもが集まるクロモンこども食堂。自身の子ども時代の経験や子ども食堂で出会う子どもたちの解放感溢れる姿から、薄葉さんは第3の居場所の重要性を考えています。

私の子どもの頃は、近所のおばちゃんや駄菓子屋さん、友達のお母さんなど色んな大人に囲まれて育っていました。学校から帰ってくれば街中で「おかえり!」と声をかけてくれるし、「昨日こんなことがあってね。」と話せるような大人が周りにいました。

そんな環境を知っているので、親でも学校の先生でもない大人と過ごす第3の居場所って大事だったんだなということが、実感として蓄積されています。

もし子どもがお母さんに怒られて家を飛び出してしまうようなことがあっても「入れて!」と言える場所があるのって大切だと思うんです。どんな事件に巻き込まれるかもわからないし...

お腹がいっぱいで居場所があれば、子どもたちの最低限の安全と健康は守ることができるんじゃないかなって。

子どもたちの「ガス抜き」の場所でありたい

家や学校で「いい子にしていなくちゃ」と思う子どもたちには、ガス抜きの場も必要です。

うちの子ども食堂に来る子どもたちって、慣れると靴は脱ぎ散らかすし、あぐらはかくし、ちょっとお行儀が悪くなってきます(笑)。でもそれを怒ったりせずに、「そのままのあなたでいいんだよ」という姿勢で子どもたちに向き合っています。

安心して頼れたり、素の自分でいられたりする第3の居場所が地域の中にあることで、子どもたちの安全や健康は守られるんじゃないかなと考えています。

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ある日のこども食堂の様子
(出典:クロモン子ども食堂Facebookページ

後編へ続く!

「子どもにとって、一人でも多くの関わる大人がいた方がいい。ひとつでも多くの目がその子に向けられていたほうがいいんだなということを、子ども食堂をやりながら感じています」と話す薄葉さん。

薄葉さんの言葉の一つ一つに熱が感じられ、「私も何かできることはないだろうか?」と考えずにはいられなくなりました。

後編では、話の舞台を北品川から港南に移します。

薄葉さんの子ども時代には広い空き地が広がっていたけれど、今では高いビルが建ち並ぶオフィス街に変わった港南。そんな街で子どもたちのためにできることを、薄葉さんと一緒に考えてみました。どうぞお楽しみに!

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