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品川駅から徒歩8分。夜の東京湾を灯し続ける屋形船【船清/旧東海道】

品川駅港南口から歩きながら現代的なオフィスビルを抜けると、屋形船が集まる船溜まりがあることをご存じでしょうか?
 
夏の風物詩とも言える屋形船でのひと時は、Shinagawa peopleなら一度は体験したいもの。

エリア内には数軒の船宿がありますが、その内の1つが今回ご紹介する“船清”。
立派な提灯が下がった趣ある船着き場で、女将の伊東陽子さんが着物姿で出迎えてくれました。

伊東女将:
ようこそ、いらっしゃいませ。外は暑いので、待合室へどうぞ。

今回は夏の特別編として、船清の伊東女将へのインタビューと屋形船体験レポートをお届けします。

屋形船の“新スタイル”を切り拓く


オフィスビルが立ち並ぶ品川ですが、元々は海が広がる景勝地。
歴史を知る伊東女将に品川での屋形船の起源についてお話を聞きました。

伊東女将:
昔の品川は遠浅の海で、その地形を活かした海苔の養殖が盛んなエリアでした。その後、東京オリンピック開催にあたり用地確保や水質汚染問題があり、海苔養殖場が埋め立てられることになったため釣り船へと転業しました。その後、強化プラスチック船の登場でより早く、遠くの漁場に行けることになったので“釣りブーム”が起きました。近くの漁場では大きなカレイが釣れていましたが、埋め立てや環境汚染の影響で産卵場所が無くなってしまったことによりこれまで釣れていた魚が釣れなくなってしまいました。その為に船を活かした屋形船が増えた 、というのが品川における屋形船の起源です。

船清も釣り船として昭和24年に創業し、今から34年前の昭和52年に屋形船に転業しました。それまで隅田川の川下りとして盛んだった屋形船を品川で始めたのは船清が最初でした。

釣り船「船清丸」(提供:船清)

釣り船が盛り上がりを見せていた43年ほど前からご主人の実家である船清に携わっていた伊東女将。

“釣り”という体験がメインである釣り船と、飲食や会話、船から眺める景色をゆったりと楽しむ屋形船では、提供すべきサービスには大きな違いがあります。転業にあたっては、多くの改革・アイデアが必要でした。

伊東女将:
私が本格的に船清に関わり始めたのは、主人の父が亡くなり、主人がこの船宿を継ぐことになった時です。私は過去に勤めていた料理店で仕入れ、一般事務、接客を経験しており、経営という視点はもちろんのこと、お客様の年代やお仕事などの特性から「お客様がどのようなことを好み、喜んでいただけるか」という傾向を読み取ることを学びました。 その経験を活かして女将として関わることになりました。船の世界は男社会でしたから、女性が“女将”として着物を着て表に出ることは当時としては新しいことでした。


伊東女将:
その後は、老若男女問わず多くの方に屋形船の体験を届けていきたいという考えの下、船内の環境をより快適にする為の工夫を重ねてきました。

女性のお客様の視点に立ち、船内のお手洗いを水洗化して清潔感を感じられるようにしたり、床に座る文化がない海外の方を意識して掘りごたつやイスに座れる席を設けたりすることで、幅広い顧客層を獲得できるようにしました。
現在では当たり前になっている、船上の展望デッキに上がって開放的な景色を楽しんでいただくサービスも、船清が最初に取り入れた“おもてなし”です。

時代のニーズに対応して新たなサービスを実装する船清。今年に入ってからも“お一人様コース”や“サプライズケーキ”など様々なサービスを開発し、多様なお客様やシーンに対応しようと日々試行錯誤を続けています。

伊東女将:
お客様のためにできることは最大限チャレンジしていきたいという想いはありつつ、全てが実現できるわけではないので毎日トライアンドエラーの連続です。
 
イスラム教徒の方にも屋形船を楽しんでいただきたいと考え、ハラル講習会やハラル認証を受けている飲食店を訪問してお話を伺ったりもしました。しかしながら、食材だけではなく、別の料理を調理した器具との併用が禁止されていたり、イスラム教徒の調理人が勤務してなくてはいけなかったりと、
宗教上で定められている細かいルールがたくさんあることを理解し、今では出来る限りのことをしてお迎えしています。

ただ、今実現できなかったことも時が来ればできるようになるかもしれない。お客様が求めているものは貪欲に追求していきたいですね。

想いは一つ。“お客様に楽しんでいただきたい。”


様々な取り組みに挑戦していく船清は、屋形船業界ではパイオニアとも言うべき存在。
先進的な取り組みには批判がつきものですが、新たな取り組みを提案・実行し続ける船清の企業精神にはどのような想いが込められているのでしょうか。

伊東女将:
とにかく「お客様に楽しんでいただきたい」という想いに尽きます。海外旅行に行った時でも「海外のサービスはどういった視点なのか?自分だったらどんなサービスを嬉しいと感じるか?」を常に考えています。

 
船清のスタッフ全員がそういう考えを持っているので、お客様への対応改善や新たな体験に対するアイデアもどんどん出て来ますね。スタッフが本当に勉強熱心で、海外からのお客様をお迎えするにあたって役に立つ英語のフレーズをスタッフ待機所や船内に貼ってスタッフ全体に共有するメンバーもいます。

そんな努力を重ねながら、乗客一人ひとりにとって限りなく100%に近いおもてなしができるようにしていると話す女将。しかし、どんなに経験を積んでも自身の対応に満足することはないと言います。

伊東女将:
毎日反省ばかりですよ。百人いれば、百通りの満足の形がありますから。
たくさんのお客様の対応をしていると、時には一人ひとりに丁寧な対応が行き届かない場合もあります。「あの時、ああしてあげられればよかったのに」と思うことも多いですよ。
 
でも、完璧がないからこそ「もっと良くしていきたい!」と前向きに取り組み続けられる。それが仕事の面白さ、楽しさじゃないですか。日本の伝統文化に携われるということも、“屋形船”という他にはない体験に携われることも含めて、“船清の女将”というのは、私にとって本当に天職です。

いざ乗船!“一期一会”を楽しむ屋形船


様々な方に屋形船を楽しんでほしいと話す伊東女将。
一方で、屋形船というと“格式高い”というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで、編集部が“スタンダード乗合船コース”を体験することに。
 
今回乗船するのは、掘りごたつタイプの“紫式部”。自慢のお料理を味わいながら品川の船溜まりから東京スカイツリー、お台場を周遊する約2時間45分の体験です。
 
出船前、伊東女将が船清の屋形船のコンセプトを教えてくれました。

伊東女将:
私たちが大切にしているのは「一期一会」。お客様と船員はもちろん、乗り合わせるお客様同士で一体となって楽しんでいただきたいのです。
 
屋形船は陸地の飲食店等と違って、船着き場を離れてしまったら船の外へ出て行くことができません。だからこそ、乗り合わせた人同士みんなで楽しく過ごせるのが一番です。

ぜひその雰囲気を楽しんで来てくださいね! 

そう話す伊東女将に見送られ、ついに出航。
 
スタンダード乗合コースのドリンクは、ゆっくり過ごすのには嬉しい飲み放題形式です。
テーブルに並んだ“鮎トマトソースがけ”、“バジルチーズ”など、モダンなお料理と共にビールを味わいます。なんとも風情のある眺め。

お料理の目玉は船内の厨房で揚げる天ぷら。揚げたての品が一品一品運ばれてきます。
 
ちなみに、屋形船の定番メニューとしての”天ぷら”は釣り船時代の名残。釣った魚をその場で天ぷらにして食べるスタイルが屋形船にも受け継がれています。

サクサクな衣に包まれたプリプリの海老に、フワフワ食感の鱚や穴子、香り高さがたまらない舞茸…どれも絶品です。と、ここで船頭さんからコメントが。

船頭:
揚げたての天ぷらはうちの自慢です。舞茸も、カリカリサクサクに揚げるのがポイントです!
 
揺れる船の中で天ぷらを揚げるのは技術がいるのです。特に花火大会の際は、多くの船が集まるので余計に揺れてしまって大変です(笑)。

絶品の天ぷらに舌鼓を打つRe-FRESH編集部。
そうしているうちに、浅草は桜橋までやってきました。錨を下ろし、しばし停泊します。
 
展望デッキに上がると、目の前には雲がかかり幻想的な光りを放つ東京スカイツリーが。気持ちいい夜風を全身で感じながら、浅草の街並みをぼんやりと眺めます。

15分ほど停泊したら、再び品川浦に向けて出航。船着き場を出航した時には明るかった空もとっぷりと暮れ、先ほどとはまた違った夜の街明かりが煌めいています。

東京湾から眺める東京タワー。
週に1度の特別ライトアップ“インフィニティ・ダイヤモンドヴェール”の輝きです

航行中は船頭さんが橋の特徴や歴史について解説をしてくれます。豆知識を聞くたびに、「そうなんだ!」と乗客から感嘆の声が上がります。その日たまたま乗り合わせたメンバーにも関わらず、まるで最初から知り合いだったかのような一体感が生まれてきます。

最後は全員で一本締めをして終了

そんな非日常を満喫していると、あっという間に品川浦へ。
屋形船でのひと時を堪能した上で、改めて伊東女将に“屋形船の魅力”を聞きました。

伊東女将:
屋形船から見る東京って、とってもきれいでしたでしょう?
先日も70代くらいのマダムが乗船されたのですが、「東京にはこんなに素敵な体験が出来る所があるのね、また来るわ」と感動してくださいました。
 
非日常なんですよね、屋形船は。
船の上は日常とは別世界ですから、きっと日々のことを忘れて心安らげる時間になるはずですよ。
 
品川は、オフィスから少し歩いただけでこんな体験ができる場所があるというのが大きな魅力だと思います。ぜひ、仕事終わりの安らぎの時間としても活用いただきたいですね。

難しい作法があるのではないかと思うくらい敷居の高さを感じる屋形船。しかし、いざ乗ってみると、終始明るい笑顔で優しく丁寧にルートや豆知識を教えてくれるスタッフのおかげでリラックスして楽しむことができました。
 
いつも働く品川の街並みがまるで違う風景に見える2時間45分は、まさに“心の小旅行”。
 
貸し切り船での宴会や、家族での特別な日のお祝い、大事なデートにはぴったりの屋形船ですが、よりカジュアルに楽しめるようにと新たなプランを考案中とのこと。
 
平日のお仕事終わりにリフレッシュとして体験してみると、きっとその日一日がとても充実したものに感じられるはず。
 
ぜひ一度体験してみてください!

ご予約方法は船清HPからチェック👇
https://www.funasei.com/

それでは、次回の記事もお楽しみに。

【店舗情報】船清


※要予約※
住所|〒140-0001 東京都品川区北品川1-16-8 船清ビル
TEL|03-5479-2731
HP|https://www.funasei.com/
MAP|https://goo.gl/maps/ujstLsAVEzGDCEZ69


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