見出し画像

夢は“品川産運河ウナギ”!東京海洋大学教授と語らった知的でオトナでおでんな水辺【おでんと日本酒 みつぼし/天王洲】

品川にゆかりのあるゲストをお招きしながら、地元飲食店の魅力を伝える“Re-FRESH”。今回は、天王洲運河のほとりにある“おでんと日本酒 みつぼし”で、“国立大学法人東京海洋大学”(以下、海洋大)の佐々木剛教授にお話を聞きました。
 
みつぼしから見て天王洲運河の対岸に所在する海洋大。一般の方も気軽に敷地を散策でき地域に開かれた大学ではあるものの、大学というとやはり堅いイメージが付きまとうもの。

今回の佐々木先生のお話は、海洋大の存在を身近に感じ、水辺がある街・品川に秘められたポテンシャルや、これからの運河の在り方に思いを馳せるきっかけを与えてくれました。


今回の舞台“おでんと日本酒 みつぼし”


リノベーションされた倉庫群やボードウォークにより構成される、お洒落スポット“天王洲”。陽が落ちる頃には、運河に反射した光と、遠くに立ち並ぶ高層ビルの窓灯りが絡み合い、幻想的な空間になります。特に“天王洲ふれあい橋”から臨む夜景は格別で、ため息が出るほど美しい東京の姿を見ることができます。

天王洲ふれあい橋から、運河を尻目にボードウォークを1-2分歩いた場所に所在するのが、今回の舞台。“おでんと日本酒 みつぼし”です。

運河に面したオープンテラス式の店舗は、行き交う船を眺めながら季節ごとの風を感じられる最高のロケーション。ビニールカーテンの囲いと共に冷暖房もあるので、雨の日や真夏・真冬でも楽しめるお店です。

夜の時間帯はこの季節にはたまらないおでんに加え、一品メニューや地酒も豊富に取り揃えており、日本酒党も大満足なお店です。

佐々木先生ってどんな人?


東京海洋大学は、2003年10月に“東京商船大学”と“東京水産大学”(以下、水産大)の統合により誕生した、日本唯一の海洋系大学です。それぞれの大学の起源は、1875年・1888年に遡り、水産大の前身である水産伝習所の創立に尽力した松原新之助は、1885年に日本で初めて“水産学”を具体的に定義した人物です。

水産学の興りからこれまで、1世紀半に渡りその中心にあり続けてきた海洋大。そこで教鞭を執る佐々木先生は、一体どのような人物なのでしょうか? 

佐々木さん:
海との出会いのきっかけは、小学生の頃に近所にできた釣り堀でした。一度友達と遊びに行ってみたところ、すっかり熱中してしまい、海釣りにも行くようになり、休日は毎週のように”どんこ(エゾイソアイナメ)”などを釣っていました。

一方で、中学生になってからは勉強やクラブ活動が忙しくなり、ほぼ釣りには出かけなくなりました。水産大に進学した理由も、釣りが好きだからという訳ではないのですが。今思えば、導かれて入学したのかもしれませんね。

提供スピードの速さはおでん屋さんの長所です。
注文後すぐに“おでん8種盛り”(税込1,375円)、梅水晶(税込528円)、出汁巻玉子(税込605円)が到着。この3品全てに水産加工品が使用されています。まさに今夜にぴったりの“話のつまみ”!

大学では養殖学科に所属した後に、海の生態系を理解しようと生態学の研究室に入りました。養殖学とは全く異なる分野であったため、内容についていくのに苦労しましたよ。当時の教授に「30年俺の前に顔出すな!」と言われたほどです(笑)。

ワカサギ研究で気付いた“研究は釣りだ!”


水産大を卒業した佐々木先生は、故郷の岩手県宮古市に戻って水産高校の教員になりました。この時点では、大学教諭として研究者の道を進むとは思ってもいなかったそうです。ターニングポイントは、水産高校で始めた“ワカサギ研究”でした。

佐々木さん:
宮古湾にはワカサギに似た“チカ”という魚がいるのですが、ある時、生徒が「チカと形が違う魚がいる」と言うのです。その魚は、顔はチカに似ていますが、よく見るとヒレの位置が違いました。それで「湖や川の魚として知られるワカサギは海にも生息しているのではないか」という仮説を立てて研究を始めました。

周囲からは「ワカサギが海にいる訳ない!」と言われながらも、内心では奮い立っていました。

ある時、大学の同級生からのアドバイスを受け、脊椎骨の数の違いに目を付けました。チカの脊椎骨は60個以上、ワカサギの場合は57個です。そこで“ワカサギらしき魚”の脊椎骨の数を調べてみると、ワカサギと一致しました。これが根拠となり、 “海にもワカサギが存在する”ということ証明できたのです。

ノンアルコールビールを注文し、
メモをとりながら取材の受け答えをする姿に、
先生の真面目で細やかな人柄を感じました。

 その時に気が付きました。「研究は、釣りと一緒だ」と。

研究においては、様々な仮説を立てて、仮説が証明できた時にはググッとした「きたぞ!」という手応えがあり、釣りの当たりが来た際の手応えと同じ感覚なのです。この感覚をまた得たいという想いもあり、水産学研究者としての道に進むことを選択しました。

原体験により高まる街の“価値”


少年期の原体験から佐々木先生が得たものは、水産学博士の称号にとどまりません。これからの教育には“関係価値”の視点が重要になるだろうという気付きも与えてくれました。

 佐々木さん:
小学生の頃、私が釣りから帰ると祖父が釣果を褒めてくれました。子どもが一生懸命に探求をして、成果を持ってきたら褒める。そこに大人の役割があったように思います。

色々な大人が地域の子どもの探求を応援していると、子どもは地域に愛着を感じて、地域を大事にしたいと思うようになる。また、人と自然との繋がりが人同士の繋がりも生み出す。これがまさに“関係価値”の考え方です。

 関係価値とは、環境との関わりによって人がより良く生きられるようになることを価値とみなす概念で、近年提起されました。生態系や自然環境の価値を定量化する指標として研究が行われています。

佐々木さん:
先日、品川にお住いのご家族と一緒に岩手県の山で源流体験をしてきました。山を登って川の水が湧き出る場所に行き、どうやってここから水が出てくるのか、おいしい水を飲むにはどうしたらよいのか等を皆で考えた後に、山頂のホテルでサクラマスを食べました。

半年かけて川を遡上してきたサクラマスは最高においしく、子どもたちも感動していました。同時に「私たちは源流を歩くだけでこんなに疲れたのに、サクラマスはなぜここまで遡上してくるのだろう?」と、自分たちの体験を通して、生き物の生態に興味を持ちはじめたのです。

関係価値のポイントは、自然と繋がること。そして、自然と繋がるためには、食べ物が一番わかりやすいです。

源流体験に参加した子どもたちは「おいしいものを食べるためには、自然環境と人間が良い状態で繋がっていなければならない」ことを学びました。必要なのは現場の体験であり、“原体験”なのです。

“鯖のへしこ”(税込638円)は佐々木先生のリクエスト。
へしことは、生魚を塩と糠で漬けて作られる
福井県若狭地域伝統の保存食です。

「へしこ1枚で3日はごはんを食べられます。
旨味はイクラ以上!」と佐々木先生。

もちろん地酒もスイスイすすみ、ふるさと日本への愛は増すばかり。

運河学習が切り開く“品川産ウナギ”の夢


豊かな自然環境とそこから得られる美味しい食材を堪能し、その土地の価値を感じる——そのような経験は、誰でも多少の心当たりがあるのではないでしょうか。

一方、現在の運河に“自然”や“生命”のイメージはなく、自然の価値を感じとれる場所とは言えない現状があります。

だからこそ、“品川の子どもたちが誇りに思える運河”の姿を模索しています。

 佐々木さん:
実は、品川の運河には魚が豊富にいます。海洋大の繋船場で行った採集調査では64種の魚が採れました。また、 “カニ護岸”(芝浦アイランド内)には、クロベンケイガニやアカベンケイガニなどがいて、春にはエイの産卵も観察できます。

2016年には3個体のニホンウナギを確認したこともありますよ。 “品川産運河ウナギ”が獲れたら、食べてみたくありませんか?

みつぼし対岸の眺め。

ライトアップされた天王洲水門の左に見えるのが
海洋大敷地内に保存されている
登録有形文化財“雲鷹丸”(うんようまる)。

採集調査を実施した繋船場“ポルト”は
水門の向こう側にあります。

 ウナギはヘドロがある環境を好みますが、ヘドロから硫化水素が発生していると寄りつきません。かつての芝浦の造成干潟ではヘドロから硫化水素が発生していてひどい臭いでしたが、運河学習(港南中学校で実施している環境学習)で行った実験で“鉄炭団子”(てつずみだんご)と呼んでいる粉末状の鉄と炭を固めたものを沈めておくと硫化水素も水の濁りも除去できることがわかりました。そしてその結果、ウナギが寄りつくようになったと考えられます。

いつか品川の子どもたちが、「私たちの地域には運河があって、そこにはウナギが生息しています」と自慢できるような環境を提供したいです。

この夜、最も歓声が沸いたお料理がこちら。
おでんなのにとろとろ半熟の“たまご”(税込198円)です。
作り方のポイントは味付け方法と加熱時間。
詳しくは現場でお尋ねください!

大人も子どもも“海街コミュニティ・スクール”にいらっしゃい


水辺の諸問題を解決するために、佐々木先生は大学の枠組みを超えた取り組みを始めています。全ての人が海洋への理解(水圏環境リテラシー)を持ち、地域の課題解決に取り組むための学校、“東京海洋大学 海街コミュニティ・スクール”です。

海街コミュニティ・スクールでは、大学・地域住民・学校・民間企業が協働して、前述した鉄炭団子を使った運河の水質改善に取り組んでいます。

佐々木さん:
海街コミュニティ・スクールの取り組みは、地味ですしお金にもなりません。しかし、誰かがやらなくてはいけないことです。私が研究者として今あるのは、子ども時代に自由に探究をさせてくれた大人がいたからです。その恩返しの意味も込めて、子どもたちの探究の場を提供していくのが私の任務だと考えています。

もちろん、対象は子どもだけではありません。水辺は誰もがアクセスできる公共空間ですし、上下水道を介して誰もが水辺と繋がっています。だからこそ、大学・企業・住民・学校等のマルチステークホルダーが連携した上で、一緒に豊かな水辺を復活させる事が重要だと思います。是非、協力し合い、品川の運河をより良い環境に変えていきましょう!

 海街コミュニティ・スクールは、全国拡大を目指しています。しかし、そのためには、活動を推進する“水圏環境教育推進リーダー”(水圏リーダー)の存在が不可欠です。

今回の記事を読んで、佐々木先生の水圏環境教育や運河学習などの取り組みに興味を持った方は、ぜひ海街コミュニティ・スクールの門を叩いてみてください。そして、一緒に“品川産運河ウナギ”の夢を追いかけましょう。

海街コミュニティ・スクール公式HP「海街新聞」
https://oceantown.jp/

佐々木先生、ありがとうございました!

それでは、次回の記事もお楽しみに。

【店舗情報】おでんと日本酒 みつぼし


住所|東京都品川区東品川2-2-4 天王洲ファーストタワー 1F
TEL| 03-5843-4415
MAP|https://goo.gl/maps/5KY2FGqyuFchFFqo6


この記事が参加している募集

#おいしいお店

17,849件

#探究学習がすき

7,565件

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!