見出し画像

品川は“鮮度”が自慢だから。CSR48総監督、「自然体でありのまま」なキャリアとグルメを楽しむ【居酒屋みかさ/港区港南】

品川駅港南口から運河方面へ伸びる、多くの飲食店が建ち並ぶ賑やかな大通り。朝夕には多くの通勤客が足早に行き交うこの通りに、昭和の面影を色濃く残す路地裏があるのをご存知でしょうか。

通好みな入り組んだ路地に、これまた通好みなレトロな飲み屋が軒を連ねる路地裏の名店“居酒屋みかさ”が本日の舞台。

〈路地裏で取材と言えば|こちらの記事も合わせてチェック👇〉

店舗の建物は、品川駅前に残っているのが奇跡と思えるほどの年代物。現店主によると、先代・先々代にあたる父と叔母がここで“みかさ”を始めてからは30年ほど。この建物が建てられたのは、昭和50年頃のことなのだそう。

1階はカウンター4席、2階は四畳半ほどのコンパクトな店内には、昭和の建具が現役で使われています。引っ張り式の水洗トイレに、模様入り磨りガラス、黒い電気スイッチ。昭和生まれのShinagawa Peopleには懐かしく、アンティーク好きには好奇心がかき立てられるお店です。

さて、こちらのお店でお話を伺う今回のゲストは、ソーシャルグッドやサステナビリティが現在ほど認知されていなかった頃から、いち早くCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibirity)の重要さに気づき、活動してきた太田さん。驚くべきは、その活動を仕事としてではなく、プライベートで始めたことです。

なぜそこまでCSRに熱心なの?
どうやってプロジェクトを成功させたの?
そのバイタリティはどこから沸いてくるの?

太田さんへ伺いたい事はたくさんありますが、ひとまず落ち着いて、お酒をゆるりといただきながら、積もる話をお聞きしていきましょう。

太田さんってどんな人?


太田さん:
乾杯!……う〜ん、おいしい。この銅製カップと瓶ビールのコンビネーションがおいしさを倍増させますね。

瓶ビール クラシックラガー(¥980)

席に着き、瓶ビールを注文して手酌でカップにビールを注いでいた太田さん。今夜の取材は太田さんのペースで進みそうな予感がします。

太田さん:
私の好きなメニューはセンマイ刺し!あと、ホルモンポン酢も。もともとホルモンは好きですが、茹でてポン酢って、なかなかないですよ。女子的にはレバーですかね。鉄分は必要ですよね。“みかさ”の価格帯なら、端から端まで全部注文してみたいです(笑)

私は7年近く品川に住んでいて最近は在宅勤務も多いので、この界隈で食事を取ることも多いです。『Re-FRESH』で紹介されているお店は、ほぼ行ったことがあります。

“みかさ”は近所に住んでいた友人と過去に利用したことがあるのですが、ずっと再訪したいと思っていたので今回の取材依頼はちょうど良いタイミングでした。

話の流れで、太田さんと店主とが友人を介してつながっていたことが発覚。おふたりとも、顔が広い!

震災からCSRへの志。アイドルとなりイメージ変革へ



センマイ刺し(¥600)

太田さん:
やっぱり、これは美味しい!

太田さんが思わず歓声をあげたのは、 “センマイ刺し”。“みかさ”のホルモンは近隣の食肉市場の卸業者から直送なので、鮮度は抜群。特性のタレをつけてさっぱりと、コリコリの食感を楽しめます。

美味しいホルモンにテンションが上がったところで、まずは太田さんの“これまで”をお聞きしていきます。

太田さん:
私のキャリアは北海道で始まったのですが、仕事の楽しさを知った30代で初めて、北海道から東京のグループ会社に自ら希望して転籍しました。
その頃は、イベントの企画運営を行っていましたが、着物を着て司会をすることも多く、華やかな仕事でしたね(笑)。

そんな折、東日本大震災が発生しました。

テレビで流れる現地の映像を見て、いても立ってもいられず2011年5月に震災ボランティアとして福島県いわき市を訪ね、それから延べ50回以上はいわきに通い続けました。東京では髪をくるくる巻いて飲み会に行っていた私が、いわきではノーメイクで長靴と軍手姿でドロドロになってがれきの撤去作業をしていました。仕事での成功に夢中になっていた頃で、多くの仲間との出会いから大いに刺激を受け、横に広がるキャリアへ目が向き、人生の転機になりました。

ボランティア活動の一環で、商店街でイベントを開催したのですが、子どもたちと水鉄砲で遊んだところ大騒ぎになりました。放射能の不安から家の外に出てはいけない、と抑圧されていたものがはじけたのでしょう。地元の大人たちも「久々に子どもたちの歓声を聞いて元気になった」と、喜んでくれました。それを機に、水風船を使った新スポーツ“水風戦”が生まれました。2012年7月にはみんなで楽しく街おこしができたらと考え、いわきで出会ったパートナーと共に“一般社団法人水風戦協会”を設立し、大会運営を行ってきました。

みかさの看板ドリンクは“樽生ホッピー シャリ金”(¥550)。
冷凍庫でキンキンに冷やしたジョッキにシャーベット状のキンミヤ焼酎を入れ、
その上から生ホッピーを注ぐ“二凍一冷”スタイル

一方で、「仕事として東北の復興に携わりたい」という想いも強くなり、数年後に希望が通りCSR部に異動することになるのですが、その前に企業の女性CSR担当者と“CSR48”という勉強会グループが立ち上がりました。CSR部に異動する前に他社の人たちとグループを作っちゃうなんて、すごいでしょ?

当時のCSRは“環境対応”や“コンプライアンス”といった堅いイメージが強く、知名度もさほど高くありませんでした。「CSRを広めるためにはファンづくりが必要なのでは?」という仮説を立て、社外で行われた勉強会に参加していた女性たちが賛同してくれて、そこに居合わせたメンバーが中心となりグループを結成しました。

「CSRは企業のブランド価値を上げる活動なのだから」ということで、メインビジュアルにもこだわり、女性5人が黒い衣装で当時流行ったヘアコンディショナーの広告をイメージした写真も、話題集めとして効果的でした。徐々に興味を持つ人々が集まり、今ではメンバーは100名程度に増えています。「CSR部に異動したけれど、何から手を付けて良いかわからず困っています」と、“迷える子羊”状態の方から連絡をいただくことも多いですよ。ちなみに今はCSRからサステナビリティへと部署名も変化しています。

男性も女性も生きやすい、サステナブルな社会へ。HAPPY WOMAN


(引用:HAPPY WOMAN ONLINE

水風戦協会やCSR48と並び、太田さんを語る上で外せないのが、“一般社団法人HAPPY WOMAN”です。HAPPY WOMAN🄬とは、女性のエンパワーメントとジェンダー平等を推進する組織。毎年3月8日の“国際女性デー”には、“HAPPY WOMAN FESTA”というイベントを開催しています。

日本ではまだ認知度が低い国際女性デーを、太田さんはどのように普及させていこうと考えているのでしょうか。国際女性デーの成り立ちや、HAPPY WOMAN FESTAについて聞きました。

太田さん:
2017年から理事として関わっている一般社団法人HAPPY WOMANとの出会いのきっかけもCSR48でした。メンバーの一人が、偶然HAPPY WOMANの関係者と知り合い、代表とお会いして共感し、イベントに関わるようになりました。

“HAPPY WOMAN FESTA 2023”では、3月8日の“国際女性デー”に全国14都道府県がそれぞれのイベントを企画しています。東京会場では、持続可能な社会づくりに貢献し活躍している女性を表彰する“HAPPY WOMAN AWARD for SDGs”や、女性のエンパワーメントやジェンダー平等に関連するセミナーを開催します。

目標は、2030年までに全国47都道府県でこのイベントが開催されることです。各開催地の地元でイベントを開催したい方からご相談いただく形をとっているので、あくまで自主性を尊重しています。希望される方には、こちらからコンテンツを提供したり、イベント当日にHAPPY WOMANのシンボルカラーの“HAPPY YELLOW”を身につけてもらったりと、一緒に機運を盛り上げています。

“ジェンダー平等”はそもそも、「女性だけを特別扱いしよう」というものではなく、「性別に関わらず誰もが生きやすい社会を実現する」ための考え方です。世界のジェンダーギャップ指数で日本は、120位前後を推移しており、経済・教育・医療・政治の4分野でいくと経済と政治への女性の参加が特に遅れています。家庭における性別による役割分担なども課題の一つですし、その意識を一般に広める必要があると思います。普段、この問題を考える機会はあまり無いかもしれませんが、3月8日が「ジェンダー平等を考える日」になると良いなと考えています。

“自然体でありのまま”自分の道を作る


ホルモンポン酢(¥600)

カウンターには、お店のおすすめで太田さんのお気に入りでもある“ホルモンポン酢”が登場。素材勝負の一品で、なんとホルモンは茹でただけ!市場直送の鮮度だからこそなせる、ありのままのホルモンを味わえます。

インタビューの話題は、太田さんの社内エピソードへ。プライベートに仕事に縦横無尽に活躍する太田さんですが、「やりたいことをやった結果」と、愉快そうに笑います。どこまでも自然体で、ありのまま——それはまるで、このホルモンポン酢のように。

太田さん:
プライベートと本業をきっちり分ける方もいますが、私の場合はあまり線引きをしないです。「わぁ!この人とこの人を引き会わせたら楽しそう!」というワクワクが原動力で、「やりたいことをやっていれば、何かが後から付いてくる」というような感覚ですね。

CSR48の2代目総監督として、ソーシャル・イノベーション・マガジン“オルタナ”の編集長にCSR48の掲載を依頼したのがきっかけで、誌面連載が始まりました。それが私のプロフィールにもなっていて、出張先で「あのコラムを書いている太田さんですか!」と迎えられる事も多いので、結果的にビジネスにも好影響を及ぼしています。CSR48メンバーと勉強会で学んで満足するのではなく、色々な形で学んだことを世の中に発信したことで、私の想いが世の中に伝わっていたということを実感しました。

〈CSR48の連載はこちらでチェック👇〉
https://www.alterna.co.jp/authors/554/

カウンター越しに燃え上がるファイヤーの主は、“シロのにんにく炒め”(¥600)。
弾力がある歯ごたえに噛めば噛むほど染み出る甘みで、
飲みこんでしまうのが惜しいほどのおいしさ

全国の支社を回りながら“CSRレポートの勉強会”を毎年行っていたことがあります。すると「会社のことを家族に話そうと思う」「会社を辞めるのをやめました」「うちの会社って良い会社なのですね」と感動する社員も少なくないです。そういった活動を通じて社員が自社を好きになり、パーパス(存在意義)を感じられるようになると企業としても従業員としてもWin-Winですよね。

北海道の地域採用から転籍し、今では会社の魅力を全国で伝える立場にいる私を見てエンカレッジされる社員もいらっしゃるので、そういう方達のモチベーションになれているという実感は私にとっても励みになります。

武勇伝の数々に、思わず「ジャンヌダルクみたい…」と呟いた編集部員に、
すかさず「ジャンヌダルクは17歳だったけどね!」と笑って突っ込む太田さん

自分も、会社も、世の中も、変えるためには動いてみよう。


焼きレバー(¥1,050)

メインディッシュは“焼きレバー”!新鮮な牛レバーを鉄板にのせて、カセットコンロと共に提供されるスタイル。着火してしばらくすると、こぢんまりとした4人掛けのカウンター席に、ごま油とレバーが焼ける香りがジュワーッと立ちこめました。

熱々のレバーを堪能しながら、最後に太田さんの今後の展望、そして太田さんの目標の実現に不可欠な存在である“新世代”へのメッセージもお預かりしました。

キレイめファッションに身を包む一方で、
カメラを向ければひょうきんな表情も見せてくれる。
さすが、CSR界のアイドル

若者たちは義務教育からSDGsを学んでいます。これからの買い物では、フェアトレードなものやCO2排出量が少ない製品を選ぶ。購入した品物は長く使うし、廃棄する際はその後にどうなるかまで考えながら使う。そうした選択が、浸透しつつあると思います。

そんな若者たちの企業選びでは、企業の持続可能性も一つの基準になっています。「ようやく時代が私に追いついてきた!」という感じですね(笑)。

 
世界の複雑な課題を解決するには、企業や自治体のパートナーシップに加え、それまでの常識を変える行動が大切です。

最初は自分の小さな変化でも、それが集まればいずれ大きく社会を変えていくことだって出来ると思います。

CSR48総監督としてメディアで紹介されることも多い太田さん。

検索をすれば、いくつもの取材記事や寄稿記事を見ることができますが、実際にお会いしてお話を伺うと太田さんの“自然体な魅力”がより一層伝わってきます。激シブな“みかさ”をチョイスしたのも太田さんの“自然体”なのかもしれません。

屈託のない笑顔や、初対面であることを忘れさせるほどに人懐っこい人柄。それでいて震災ボランティアにCSRにと、信じた道をパワフルに突き進む強さもあります。

品川界隈で飲むことも多い太田さんなので、ふとお店で横を見ると明るい声が聞こえるかもしれません。その際は太田さんの様に「何かが後からついてくる」と思ってお声がけしてみてください。

それでは、次回の記事もお楽しみに。

【店舗情報】居酒屋みかさ


住所|東京都港区港南2-2-4
TEL| 03-3472-0562
MAP|https://goo.gl/maps/wJLpDgbdEbKocFdf9
食べログ|https://tabelog.com/tokyo/A1314/A131403/13095495/


この記事が参加している募集